[ 訪問記 02 ]
プロに尊敬(リスペクト)される茶園 ジュンパナ

インド北東部・ヒマラヤ山脈の麓(ふもと)に広がる紅茶産地ダージリン。ファーストフラッシュ製茶作業の佳境となる3月中旬〜下旬に現地を訪問したレポート第2回目。今回はエリアを代表する名園の紹介です。

■尊敬(リスペクト)される茶園

ルピシアだより取材班が以前、コルカタのティーオークションを訪問した折のこと。挨拶を交わしたバイヤーたちに「人気のあるダージリンの茶園は?」という質問をなげると、タルボやキャッスルトン、ピュッタボンやサングマなど様々な茶園の名前が上がりましたが、「尊敬(リスペクト)する茶園はどこ?」という質問に対しては、複数のバイヤーが議論の上で「ジュンパナとグームティー」と回答してくれました。

ジュンパナはダージリンならではの深みと華やかさを両立した最上のお茶を作る茶園として。グームティーはどんな作柄のシーズンでもベストの目安となるお茶を仕上げる技術に対して。そして、このふたつの茶園のオーナーであるシャンタヌ氏への深い尊敬の念が、コルカタのお茶のプロたちの共通認識にありました。

■採算を度外視?

「ジュンパナは自分にとってビジネスである以前に、情熱であり生き甲斐(ホビー)なんだ」と語るシャンタヌ氏。1887年からの歴史を持つジュンパナ茶園の大きな特徴の一つが、完成したお茶が人力で出荷される、自動車などの運送手段で訪問できない孤立した立地。オーナーをはじめ。茶園を訪問するすべての人びとも、岩肌にそって作られた細い山道を自分の足で歩いて工場を訪問します。

そのため茶園の周辺は小鳥たちの鳴き声と遠くからの渓流のせせらぎ、風の音などの自然音に満ちています。よいお茶を作り続けるために、必要以上に手を加えない。むしろこの周囲と断絶されたお茶の桃源郷のような美しい環境を守ることにコストをかける。ある意味、効率や利益などの採算を度外視した側面すら持っている、理想の茶園がジュンパナです。

シャンタヌ氏の趣味のひとつは、日本の浮世絵の収集だといいます。細い筆を使い繊細なタッチで仕上げるインド・ムガルの細密画の伝統と肉筆の浮世絵との共通点を語る時と、お茶作り対して熱中して語ってくれる時の表情に、いずれも同様の歓喜に満ちたオーナーの愛情を感じました。

シーズンを問わず、もしダージリンの茶園選びに迷った時はジュンパナの茶葉をお選びください。ダージリンで紅茶を作ることの魅力と喜び、そして尽きることのない感動が、その風味と香りの中に必ず隠されています。