ルピシアだより 2016年12月号
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縁起(えんぎ)のよいお茶

忙しい師走がすぎればもう新年です。ここで気分一新。年明けにうれしい「縁起のよいお茶」の知恵でおいしく健やかに運気をあげましょう。

お茶で幸せを呼ぶ

通勤や通学の途中、スマートフォンのアプリで占星術のカレンダーを確かめたり、朝のテレビの運勢診断のラッキーアイテムの小物や洋服などが無性に気になったり……。

21世紀になった現在も、占いやお守りなど古くから伝承されてきた「幸せを呼ぶ」ための知識や文化が無くなる気配はありません。むしろ携帯電話やタブレットなどの道具の進歩によって、日常的に親しめるようになっています。

そこで注目したいのが「縁起のよいお茶」についての言い伝えです。

「縁起」ってなに?

そもそも「縁起」とは、とても古い仏教の言葉。今現在の状況や現象は、そこに至る様々な原因である「縁」の組み合わせによって作られているという考え方です。

よい結果はよい「縁」が作るから、先に「縁起がよい」ことを重ねていけば、自然と結果はよくなり、運が開いていく。悪い状況の原因は、その前にある悪い「縁」にあるから、「縁起が悪い」ことを回避する。

これら「縁起がよい・悪い」ことの組み合わせに関する先人の知恵は、仏教の教義とはすこし距離を保ちつつ、ことわざや民話などの形で伝わってきました。

なかには、時代や習慣が変化したことで、今日では本来の意味を失ってしまった伝承もあります。しかし、その内容には、今日を生きる私たちの暮らしの参考になる、深い意味が隠されていることも多いのです。

若水と福茶

元日の早朝に汲んだ最初の水を敬う「若水」の習慣は、平安時代の宮中にまで遡(さかのぼ)ります。

新年に感謝の念をこめて汲むことで、毎日の生活の中で使っている水を、魔除けや厄除け、若返りなどの力を持つ聖水に見立てる儀式です。

この若水でいれたお茶は「福茶」と呼ばれ、家族の健康を願うお祝いとして飲まれてきました。

また、関西地方を中心に残る「福茶」に梅干しや昆布などを入れる習慣は、平安時代の名僧・空也(くうや:903〜972年)が疫病の流行時に病人をお茶で治癒(ちゆ)したという説話に由来します。その伝承の真贋(しんがん)はともかく、酸味とうまみのある温かく濃厚な「福茶」の味わいは、真冬の体の疲れを癒やしてくれる、素晴らしいものです。

朝茶で幸運を呼ぶ

一年の始まりが元日だとしたら一日の始まりは朝。

朝のお茶、特に朝食前の1杯が福を招くという意味のことわざは「朝茶はその日の難逃れ」「朝茶は福が増す」など沢山あります。

忙しい朝、手間をかけてお茶を飲む理由は?

第一にお茶のカフェインやビタミンC、カテキンなどの力を取り入れる健康の面。

第二に、お茶を飲む時間のゆとりを持つことで、身なりをととのえ、災難やミスを遠ざける心意気の問題です。

毎日は無理でも、休日はしっかりとした朝食と朝茶で、福と運気を呼び込んでみてはいかがでしょう。

お茶で結ぶ深いご縁

日本のお茶の歴史は、空海(くうかい:774〜835年)や栄西(えいさい:1141〜1215年)を始めとする僧侶達によって作られてきました。また高価な嗜好品や薬だったお茶(蒸し製の上級煎茶や抹茶)が、日常的に家庭で楽しめるようになったのは、実はここ数十年のこと。

そのため、一般的にお茶は葬儀全般を扱う寺院や仏教との連想が強く、庶民の最大のハレの場である結婚式には、さくら茶(桜花の塩漬け)が多く提供されます。

面白いことに九州の一部では、婚礼時にお茶を贈るならわしがあります。これは「お茶は一度植えるとしっかり根を張る」ことから女性が嫁ぎ先に茶樹の苗を持ちこんだ風習に由来するものです。

教会で新郎新婦が式をあげることも多い現在。披露宴のティータイムに紅茶をいただくことや、ウェディングの記念品としてお茶を贈ることは、幸せを象徴する今日の習慣として定着しています。

茶柱は幸運の兆し

日常の中の吉兆の代表である「お茶に浮かぶ茶柱」。近年の製茶技術の進歩から、自然に起こることは珍しく、あまり見かけないものになってしまいました。

どうして茶柱が尊ばれるようになったのか? その正確な理由は不明ですが、茶柱が大黒柱や一家繁栄のイメージと結びついたこと、遊郭が男性客に出したお茶のゲン担ぎという話、また茎の多い二番茶などを売るための茶商が用いた宣伝文句だったという説があります。

しかし、その本当の理由は「茶柱に気がつく」ゆとりや遊び心、幸運の兆しを見逃さない、運気に対する気構えの有無ではないでしょうか?

忙しい時こそ、昔ながらの急須でゆっくりと日本茶をいれ、茶柱を探してみる。そんな気持ちが大切です。

さてさて、結論をいえばすべてのお茶は体と心を優しくいたわる幸運の導き手だということ。新年はもちろん、毎日ずっと、ルピシアのお茶で心身ともにリラックス。幸運の予感に満ちた日々を過ごしましょう。