お鮨の歴史とお茶の役割
握り鮨やちらし鮨、巻き鮨、押し鮨など、様々な種類がある鮨は、日本が世界に誇る料理です。祝いの席に上ることも多く、ハレの日のごちそう。日本人の心を踊らせる、お鮨の起源を見ていきましょう。
時をさかのぼること千年以上、まだ冷蔵技術のなかった時代に、生魚の保存性を高めるために、塩漬けにした生魚をご飯につけて発酵させた「なれ鮨」を作っていたという記録が残っています。これは、滋賀県の琵琶湖一円で現在も作られている「鮒(ふな)鮨」のようなもので、鮨の原型といわれています。
江戸時代になると、酢が誕生し、その防腐作用を利用して「はや鮨」が誕生します。箱に酢飯を詰めて魚介を並べ、蓋で上から押しつける「箱鮨」がこれです。
握り鮨が登場するのは、江戸時代後期のこと。箱鮨よりも短時間で作ることができる握り鮨は、当時、江戸で屋台が流行していたことも相まって、あっという間に広まります。屋台で気軽につまめるファーストフードとして人気を博すのです。
さて、ここにきてお茶がお鮨と切っても切り離せないものになります。お鮨屋さんで現在もよく見かける、あつあつの粉茶がたっぷり入った分厚くて大きな湯飲み。これも屋台で生まれました。
人が入れ替わり立ち替わりやってくる狭い屋台で、お客さんに長居をされると困るので、お酒は出さない。代わりに、短時間で抽出できる粉茶を出します。オーダーを受けて握るので、鮨職人は忙しく、お茶が減るたびに湯飲みに注いでいては手間がかかります。そこで、お茶が冷めにくい分厚く大きな湯飲みでお茶を出すことになったのです。また、緑茶に含まれるカテキンの殺菌作用も無関係ではないでしょう。
この名残で、粉茶と大きな湯飲みが現在もお鮨屋さんのおなじみのアイテムとなったのです。