Vol.146
2008年2月29日〜3月25日
百花繚乱 春のお茶
-Spring tea in full broom-
うららかな春の日に 花咲く物語と
のどかさ香るお茶をお届けします

梅の花 咲きて散りなば桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや
─薬師張氏福子(万葉集 巻五)
冷たく厳しい冬が終わり、ようよう陽光もやさしく暖かな日々です。花々が咲き始めるのを見るにつれ、待ちわびた春の到来に何とはなしにうきうきとする今日このごろ。そんな季節にぴったりの、華やかなお茶やギフトが咲きました。
表紙冒頭に引用した歌は天平2(730)年、大宰府の大伴旅人(おおとものたびと)邸で催された 「梅花の宴」で詠まれたもの。咲き誇る梅の花、散ってしまっても、その後には桜の花が続け て咲くようになっているではないか、という季節の仕組みへの感歎の歌です。古より日本人は、 咲いては散りゆく花々に心を乱し、思いを歌にしてきました。登場する花は時代とともに移ろ います。万葉の梅、古今の桜といわれるように、万葉集の時代は渡来の梅の花がもてはやされ ましたが、古今和歌集の時代には、ただ花といえば桜を指すほど、桜が文学にあふれるように なりました。現代も桜の花は春の新曲に歌われますね。
一方、桜と同じころ、より鮮やかに風景を彩る桃はひな人形を飾る花として親しまれているも のの、あまり歌には詠まれていません。ところがお隣の中国では、桃はどんな花よりも愛でら れ、詩の中でも頻繁に讃えられています。最古の詩集『詩経』に編まれた「桃夭」という詩に は、桃の花、実、葉それぞれの艶やかなみずみずしさが、お嫁に行く若い娘の初々しい様子と ともに詠われています。
春にそわそわとするのは畢竟(ひっきょう)桜のせい。天気予報でも開花前線が気になって、そ ろそろ咲くか、雨や風は…と気が気ではありません。在原業平(ありわらのなりひら)の歌にあ るように、本当にこの世に桜がなければ穏やかな心持ちで春を過ごせるのに、と恨むほど日本 人の桜への思いは強いものです。やはり桜のお花見は春一番の楽しみです。
業平の時代の桜は現在街中で見られる里桜「ソメイヨシノ」とはずいぶん趣きの異なる山桜。 奈良の吉野にあるような、楚々とした桜です。雲か霞と見まごう佇(たたず)まいは落花の予感 をはらんでいかにも儚(はかな)く、愛おしく思えます。お酒や料理を持たせた従者を連ね、は るばる山に赴くお花見は貴族の優雅な楽しみでした。
後の世の語りぐさにもなった花見といえば、慶長3(1598)年、家臣や大名1300人を集めて盛大 に開かれた豊臣秀吉の醍醐の花見でしょう。
京都の醍醐寺に近畿一円から運ばれた700本の桜が植樹され、その間にそれぞれ趣向を凝らした 8軒の茶屋がつらねられました。秀吉は幼い息子の手を引いて、愛妻や諸大名とともに一軒一軒 ゆっくりと見て回ったそうです。茶を愛し、茶に執着した秀吉らしい話です。この5か月後、彼 は世を去ります。醍醐の花見は、派手好きの秀吉が人生最後に咲かせた花でした。秀吉は茶碗に 舞散る花びらを眺めつつ、絢爛豪華な北野の大茶会、そうして千利休のことを思い出していたか もしれません…。
さあ、続いては花とお茶の織りなす春の錦をご紹介していきましょう。
おうちでも桜の紅茶で春を満喫。大好きな本を読みながら、花柄のティーカップでのんびり過ごすティータイムも優雅です。
ミルクティーに花ひとひら。ご家族やお友達とご一緒に、春を感じる楽しい趣向を。
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