ルピシアだより 2018年1月号
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花香るお茶を求めて

ルピシアが生産者とともに取り組んでいる、新たなお茶作りの現場を訪ねました。

花香るお茶を求めて

製茶工場に一歩入ると、そこはむせかえるほどに甘く濃厚な香りに包まれていました。まるで初夏の風に乗って漂う、くちなしの花のような香りです。

ルピシアだより取材班が訪れたのは、新たなお茶作りの研究拠点として、ルピシアが一年がかりで試作を続けている九州の工場です。目指しているのは、茶葉自体から花のような香りを引き出したお茶。宮崎県五ヶ瀬町の生産者、興梠 洋一(こうろぎ よういち)さんとともに、様々な検証を重ねながら試作に取り組んでいます。

花香を引き出すために注目したのが、インドや中国など海外のお茶の製法。特に台湾茶は「香りのお茶」と言われるほど華やかな香りが特徴ですが、そのカギを握るのが「萎凋(いちょう)」という独特の工程。摘んだ生葉を屋外に短時間、室内に10時間以上寝かせながら定期的に揺り動かし、葉の表面を軽く傷つけることで、茶葉本来の香り成分を最大限に引き出していきます。

釜炒り茶の原点へ

今回のお茶作りでは、この萎凋に着目しています。実はこの製法、15世紀前半に中国から九州に伝わった釜炒り茶のルーツと深く関わりがあるのです。

というのも、昔ながらの釜炒り茶は、すべてが手作業。当然、摘んだ茶葉をすぐに製茶できないので、その場に積み上げられていきます。そうして、いわば自然の萎凋が進んだ茶葉で作った釜炒り茶は、「何とも言えない甘く爽やかな香りだった」と興梠さん。お父様で先代の緑(みどり)さんと一緒に、懐かしそうに目を細めます。製茶の自動化が進み、常に同じ味わいを求められる時代の中で失われてしまった「日本のお茶の香り」がそこにはあったのです。

日本では、お茶というと春の新茶シーズンが注目されますが、秋にも良質で香り高いお茶ができます。今回お届けするお茶も、興梠さんの畑で秋に収穫した茶葉を半発酵させ、烏龍茶に仕上げたもの。ふわりと立ち上る花香とすっきりとした飲み口は、まさに驚きの感覚です。

ルピシアと興梠さんのロマンが詰まったこの企画。まだまだ試作の途上ではありますが、今後の展開にどうぞご期待ください!

毎日の日本茶