ルピシア グルマン通信8月号 Vol.84 ルピシア グルマン通信8月号 Vol.84
北国のおいしい恵み トマトの夏がやって来た 北国のおいしい恵み トマトの夏がやって来た

今月の特集はトマト。しかも、ただのトマトではございません。
濃厚な甘みと酸味のバランスが別格と讃えられる北海道産トマトを使ったこだわりのメニュー。
ひょっとしたら皆様のトマト料理の概念を変えてしまうかもしれませんよ。

夏の体にうれしい野菜

トマトは南米アンデス山脈地方原産のナス科の植物。日本には江戸時代(1660〜70年代)、長崎に伝わりました。当時は独特の酸味、赤い色が敬遠され「唐柿(とうがき)」などと呼ばれ観賞用として栽培されていました。

日本人がトマトを食べるようになったのは明治以降。昭和に一般的な野菜として普及しました。

ヨーロッパではリンゴと同様に「トマトが赤くなると医者が青くなる」という諺(ことわざ)がある健康野菜。特にトマトに含まれる色素の一つリコピンは、ビタミンEの約100倍とも言われる抗酸化作用があることで知られています。

またトマトは体内でビタミンAに変化するβ-カロテンをはじめ、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルを含んでいます。

さらにトマトの酸味はさっぱりとした口当たりで、食欲をそそります。夏の体の疲れをいたわるクエン酸の含有量は野菜類の中でもトップクラス。トマトは暑い夏にぴったりの食材なのです。

北海道は名産地

世界では8,000種以上、日本でも120種超の品種が登録されているトマト。

国内生産量のトップは熊本県ですが、北海道はそれに次ぐ一大トマト生産地。梅雨の無い北海道は高品質なトマトの栽培に最適な土地です。年間生産量56,900トン、国産トマトの約8.5%(2017年)を生産しています。 道産トマトの最盛期は8月。ヴィラ ルピシアのある北海道・ニセコ周辺の農家の直販所は、夏になると赤や黄、大小さまざまなトマトで満たされます。

近年、避暑地として注目を集めるニセコ。日本はもちろん、世界各地から集まる滞在者のお目当ての一つが、トマトを代表とするニセコのおいしい夏野菜であることにも大いに納得です。

運命の出会い

ヴィラ ルピシアの植松秀典シェフが「僕の料理に欠かせない食材」と言うトマト。

夏の北海道をカラフルに彩る様々なトマトのなかでも、シェフが深い信頼を寄せているトマト栽培農家の一軒、ニセコ町曽我の「増原ファーム」が栽培する「ぜいたくトマト®」は特別な素材。シェフが料理をする上での“縁の下の力持ち”になると言います。

「ぜいたくトマト®」は、濃厚な甘みと酸味、なめらかな口当たりが特徴。日本デルモンテ社が開発した国産フルーツトマト系の大玉品種です。一般的なトマトとくらべて、リコピンが約2倍含まれています。栽培にコストや手間がかかることから、トマト栽培農家が多いニセコでもわずか4軒しか手がけていない品種です。

増原ファームが「ぜいたくトマト®」の栽培を手がけ始めたのは15年ほど前に遡ります。

「最初、父が2、3株だけ植えてみました。当初は酸味が強く感じられたものの、しばらく置いておくと格段においしくなりました。翌年は畑の半分、その翌年は倍と拡大していき、本格的に取り組むようになりました」と語るのは息子さんの増原政行さん。政行さんはトマト栽培に関わる工夫を、ちょっとユニークなイメージで教えてくれました。

「たとえば、この畑を“ぬか床”と考えます。それに何かを漬ければ、漬物ができます。でも、もっとおいしくしようと昆布を加えたり工夫しますよね。この畑も同じ、土作りや肥料、病気対策など、絶えず工夫をし、良質な“ぬか床作り”を心がけています。もっとおいしいトマトを作るために日々努力は欠かせません」。

植松シェフはこの増原ファームのように、信頼できる生産者が作るトマトについて「新鮮な旬のトマトはそのままで“野菜の出汁(だし)”のような味わいが凝縮されている。だからなるべく過分な調理を加えずに、素材の魅力を最大限に引き出すことで、自分が目指す料理が完成する」といいます。

この「ぜいたくトマト®」をはじめとして、料理人やパティシエを夢中にさせる北海道産トマトには、実はまだまだ奥深い多様性があります。その魅力をどうぞお楽しみください。

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