ルピシア グルマン通信5月号 Vol.91 ルピシア グルマン通信5月号 Vol.91
食材天国、ニセコ〜山海の幸が集う場所〜 食材天国、ニセコ〜山海の幸が集う場所〜

すばらしい山の幸、海の幸が豊富に集まる場所、ニセコ。そうした恵まれた環境に感謝し、創造する「ニセコ料理」とは!?

食材天国、ニセコ

スキーリゾートとして、世界中にその名を知られるニセコ。同時に豊かな食材に恵まれ、良質な野菜、新鮮な魚介、おいしい肉が集まってくる場所でもあります。ルピシア グルマンの植松シェフはかねがね、ニセコを「食材の港」と称してきました。今回はそうしたニセコの優れた環境の中で創り上げる料理について、近隣の生産者と仲買人をヴィラ ルピシアのレストランにお招きして本誌編集担当・上道がお話を伺いました。

ニセコについて

上道「まず新岡さんはニセコという場所をどのように感じていらっしゃいますか?」

新岡「余市(よいち)とニセコは稲穂(いなほ)峠を挟んで、車で約1時間。文字どおり“鮮度の落ちない距離”です。私自身が市場で競り落とした鮮魚を直接ルピシア グルマンへお納めすることができる。品質には自信を持っています」

上道「小松平さんは春一番にホワイトアスパラガスをもたらしてくれる生産者のお一人ですが、ニセコにはどのようなイメージを?」

小松平「喜茂別(きもべつ)とニセコは羊蹄山を挟んでほとんどお隣です。同じ地域の野菜を使ってもらえることを本当にうれしく思っています。この地域は朝晩の寒暖差が大きいため、甘みのあるおいしい野菜が育ちます。一生懸命作っている野菜ですから、おいしいと言って使ってもらえることが一番うれしいんです」

植松「ニセコ周辺でも地域によって、微妙に寒暖差が違う。喜茂別はニセコ周辺でも一段と強く冷え込む場所。同じ野菜なのに採れる場所によって味が違う。とてもおもしろいですよね」

皆で創り上げていく料理

上道「新岡さんは札幌や小樽(おたる)などの都市部のレストランともお取引がおありですが、ルピシア グルマンとの違いはありますか?」

新岡「植松シェフはいい意味で大雑把です(笑)。街のレストランは買い方がとても細かい。何グラムのものを何個単位で、何日間に分けてという要望があります。しかし、植松シェフの場合はサイズがまちまちでも仕入れてくれる。そういうありがたい関係が築けているから、自ずと優先順位も変わってきますよね」

上道「それは植松シェフが新岡さんを信用しているからですよね」

植松「もちろんそうですが、まず関わった皆さんが良くなってほしいという気持ちが強くあります。例えば野菜は多少曲がっていても味は同じ。規格外だから価値が下がるというのは、すごくモッタイナイ。料理人がそれを調理すれば価値は変わらない。お互いにメリットがあるような関係を、この後志(しりべし)地域の生産者や仲買さんたちと築けていけたらいいと思っているんです」

小松平「札幌と比較した場合、1時間圏内で新鮮な魚も肉も野菜もそろえられるニセコの環境は特別ですよね。シェフがおっしゃったように、野菜も見た目は違っても、味は変わらない。それをしっかり調理してくれることは、僕らにとってもとてもありがたいことです」

植松「同じ愛情をかけて作ってもらったものを、ちょっとした見た目の違いでハネてしまっては申し訳がない。レストランのスタッフも同じでね。優等生ばかりではないのですが、味はいいヤツばかり。ちゃんと手をかけて育ててあげれば優秀なチームが築ける。野菜も料理人も同じです(笑)」

ニセコ料理の創造

上道「今後、ルピシア グルマンに期待することや、要望などはありませんか?」

新岡「本音を言えば、実際にシェフが市場へ来て、その日揚がった新鮮なエビやイカがずらりと並ぶ姿を見てほしい。でも毎日は無理ですよね。これからはスマホで鮮魚の画像や動画をシェフに送ろうと考えています。跳ねるエビの動画を見て、シェフが判断する。そうしたら料理のアイデアも変わりますよね」

植松「それはいいですねぇ。僕もできる限り市場や畑へ出かけていくように心がけます」

小松平「私は要望というより、とにかく今のように引き取りに来てもらえることをとてもありがたく感じているんです」

植松「実は自分で引き取りに行くって、料理人にとってもテンションが上がることなんです。鮮魚同様、野菜も生きている。採れたては全然違うんですよ。だから引き取りに行くんです。それに遠くから運べばコストもかかる。近くの素材を使うメリットは計り知れません。なによりも鮮度の良い素材を使うことができることは、料理人にとって大きな喜びですからね。また、ニセコという土地に拠点を置き、料理をしていて思うようになったことがあります。すばらしい食材が集まるニセコだからできる料理、言い換えれば『ニセコ料理』みたいなものを創造していかなければいけないという使命感を持っているんですよ」

新岡「それはいい! 海の幸と山の幸を融合させた、ルピシア グルマンでなければ味わうことができない料理、まさにニセコ料理。試行錯誤を繰り返してもかならず誕生させてください」

植松「圧倒的な地理的優位性があるからこそ、素材の力を落とさず料理し、全国のお客様に味わっていただくことが我々料理人の使命。生産者の皆さんの名前を背負って料理していますからね。僕らがおいしいと思っているものが、一人でも多くのお客様に伝わるように努力していきます」