太古からの名産地
「北海道には牡蠣の産地がいくつもあるんですが、個人的に厚岸産が好きです。今回はいつもおいしい牡蠣を届けてくださる漁師さんを訪ねます。非常に楽しみです」と遠路も苦にせず上機嫌な植松シェフです。
厚岸の名前の由来は諸説ありますが、アイヌ語で“牡蠣のある所”という意味の「アッケケシ」であるとも言われています。厚岸と牡蠣との関わりは深く、数千年前の遺跡より貝塚が発見されていることは、古くからこの土地で牡蠣が重要な資源であったことを伝えています。古来、この地域に生息していた牡蠣は殻の長さが30〜40cmもあるエゾガキあるいはナガガキと呼ばれる品種でした。しかし、明治期の乱獲により、一時期、絶滅に瀕してしまいます。その後、地元漁業関係者のさまざまな努力により、厚岸の牡蠣は復活を果たしました。
現在、厚岸の牡蠣漁は養殖が主軸ですが、厚岸の海がおいしい牡蠣を育む環境に最適であることに変わりはありません。その重要な要素の一つに厚岸湖があります。厚岸湖は海水と淡水が入り交じる汽水湖で、植物性プランクトンが豊富です。また、それに繋がる厚岸湾は海水の温度が低く、牡蠣がゆっくりと育つのだそうです。厚岸湖と厚岸湾、この異なった環境を巧みに使い分けて、厚岸ならではの豊潤な旨みを蓄えた牡蠣が産み出されています。
現在、厚岸で生産されている牡蠣は主に3種類。「カキえもん」「マルえもん」そして「弁天かき」。それぞれ背景や生産方法が異なる個性的な牡蠣です。