郷土料理から人気の駅弁へ
戦前より、津軽海峡から北海道の日本海にかけての海域はスルメイカ(真イカ)資源に恵まれていました。よって、北海道の日本海側や道南地域では生のイカに米やジャガイモを詰め、醤油味で煮込んだ郷土料理が古くから存在していたそうです。
では、駅弁「いかめし」はどのように誕生したのでしょうか? 函館から北へ50キロほど、噴火湾(内浦湾)に面した漁港町・森町。1941年(昭和16年)、この町で駅弁「いかめし」は誕生しました。戦時下であった当時、米が配給制となり、日本中が腹を空かせていた時代。この地域ではスルメイカが大量に水揚げされていましたが、小ぶりのものはその場で捨てられていました。それに着目したのが森駅で駅弁を販売していた地元の業者さん。少ないお米でもイカに詰めて食べると満腹感が得られると思い付きます。こうして誕生した駅弁「いかめし」は腹持ちがいいと大人気となります。中でも喜んだのは陸軍の兵士たちだったそうです。森駅は函館本線で旭川駐屯地へつながる路線。移動中の兵士たちは駅弁「いかめし」で空腹を満たしたといいます。
昭和30年代に入ると鉄道の高速化が進み、森駅に停車する列車が減少。駅弁の売り上げが落ち込みます。そんな時、東京の百貨店で全国駅弁大会が催され、森町から「いかめし」が出店することに。「いかめし」は大好評を呼び、その人気は今日も変わることなく、北海道を代表する駅弁として親しまれています。