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クリスマス ティーモクテルができるまで クリスマス ティーモクテルができるまで

今回のレシピ開発の裏側について、齋藤久平さんとルピシア ティースクール 小澤史央講師のお二人に聞きました。

齋藤 久平さん/ルピシア ティースクール講師 小澤 史央 齋藤 久平さん/ルピシア ティースクール講師 小澤 史央

「お茶の種類が多いからこそ難しかった」── 齋藤さん

――齋藤さんは、都内のホテルで10年間、レストランサービス兼ソムリエとして勤務していらっしゃいました。独立されてからは、それまでの経験で培ったサービススキルやドリンクに関する豊富な知識をもとに、様々なドリンクレシピを開発されていますよね。今回はルピシアと一緒に、それぞれの専門性を生かしたレシピを共同開発しましょうという企画でしたが、実際にコラボしてみていかがでしたか?

齋藤お茶を使ったドリンクのレシピは過去にも経験があるのですが、ルピシアさんとのコラボで特に難しかったのは、お茶の種類がとにかく多いこと。一つのレシピに対して、候補になり得る相性のいいお茶がたくさん出てきてしまうので(笑)。

――選択肢が多いゆえに可能性がありすぎると(笑)。そうした中で、どのようにお茶の選択肢を絞り込んでいったのですか?

齋藤何をゴールにするかで変わってくるので、最終的にはコンセプトとのマッチングを重視しました。今回のテーマは「クリスマスのおもてなし」だったので、パーティーのゲストにどう楽しんでもらうかという視点で考え始めました。ですからモクテル単体というより、モクテル全体を通じて何を伝えたいのかを大事にしましたね。

――そこから世界各国の様々なクリスマス文化を、モクテルで表現しようというコンセプトが定まっていったんですね。

齋藤はい。世界各国のクリスマスストーリーがフックになって、パーティーの会話が弾んだら面白いなと。そういうストーリーとともに楽しむモクテルの味わいは、より一層おいしく感じられるはずです。それって、まさに「おもてなし」なんじゃないかなと。

――コンセプトが固まったところで、具体的にはどのようにお茶を選んでいったのでしょう?

小澤お茶を様々な食材と合わせる時に重要なのは、お茶の個性のどの部分を生かすかです。今回はアレンジのヒントとなるカクテルが大本にあるので、それぞれのレシピの中でお茶に求める役割は味なのか、香りなのか、水色なのか。初めにそういったことを決めていきました。あとは、風味の繊細すぎるお茶や、渋みの強すぎるお茶は、他の食材と調和しにくい傾向があるので、あらかじめ候補から外しましたね。

齋藤小澤さんは、お茶の知識はもちろん、お茶を使ったレシピ開発の経験も豊富なので、それぞれのお茶に適した応用の仕方をたくさんご存知なんですね。イメージに合ったお茶をピンポイントで提案してくださるので、とても心強かったです。

小澤いやいや。そうおっしゃってくださっていますが、実際に試作してみたらなかなかイメージ通りに行かず、手こずったものもありましたし(笑)。

齋藤グロッグで最初に試作したレシピのことですね(笑)。

小澤はい(笑)。グロッグは、赤ワインをスパイスやフルーツと一緒に煮込んで作るものなので、その伝統的なレシピに沿って、煮出し式ミルクティーでよく使うCTCタイプのアッサム紅茶で実験してみたんです。ある程度渋みが出ることが予想されたので、茶葉の量や入れるタイミング、煮込む時間などを変えて何度かトライしてみたのですが、喉の奥を刺すようなお茶の渋みとジュースの酸味がぶつかってしまってなかなか上手く行かず……。ようやく味がまとまって来たかなと思っても、今度は手順が複雑になってしまって(苦笑)。

齋藤今回は、とにかく簡単に自宅で再現できるレシピにこだわりましたからね。

小澤そうなんです。誰でも失敗なく作りやすいという意味で、最終的には長時間煮込んでも渋みの出ないルイボスを選ぶことにしました。

齋藤ルイボス本来の自然な風味とスパイスやフルーツの香りがとってもよく合ったんですよね。個人的にはこのレシピ、相当気に入っています。

「隠し味のテクニックに驚きました」── ティースクール小澤

――小澤さんは今回、齋藤さんと一緒に開発してみて、どんな発見がありましたか?

小澤スパイスやフレッシュハーブなど、風味のアクセントになる素材の生かし方が大変勉強になりましたね。例えば、プンシュのティーモクテルにはスターアニス(八角)を飾ったり、コスモポリタンにはローズマリーを飾ったり。時間が経つにつれてスパイスやハーブの香りがお茶に浸透して風味が変わっていくので、会話を楽しみながら味わうパーティーのドリンクにぴったりです。

――風味の移り変わりも含めて、おもてなしの演出だなんて、素敵ですね。

小澤ええ。あと、齋藤さんのご提案で一番驚いたのは、アレキサンダーのティーモクテルで隠し味にピーチネクターを使われていたことですね。オルヅォ・チョコラータのミルク出しがベースなのですが、最初に試作品を飲んだ時には、ピーチネクターとは気づきませんでした。でも、全体の味わいの中で確実にこの隠し味が効いている……これは何だろうと。

齋藤正直、このレシピが一番苦労したんです。最初はピーチネクターを入れないレシピで考えていたのですが、それだと単なるデザートから進化しなくて……

――デザート感はあっても、カクテルのニュアンスが表現できていないということでしょうか?

齋藤そうなんです。だから基本に返ってもう一回、伝統的なアレキサンダーを作ってみて、アレキサンダーの核であるブランデーを何に置き換えたらいいのかを考え直しました。調べたら、ブランデーエッセンスという製菓材料も存在するようなんですが、スーパーで簡単に手に入る食材でないと、家庭で作ってもらえませんからね。ここで結構行き詰まりまして、何かヒントがないか散歩に出掛けたり……(笑)。

――何かひらめきましたか?

齋藤あらためてブランデーが持つ風味の要素を分解してみることにしたんです。すると洋梨やりんご、桃のような香りがあると感じました。でも、洋梨はジュースであまり売られていなし、りんごは他のレシピで使っているし……。何段階目かの試作で、ようやくピーチネクターにたどり着いて、それが引き金となってアイデアの道が開けました。

「お茶を使う必然性のあるレシピを」── 齋藤さん

――今回の4つのティーモクテル、どれもしっかりお茶の風味が生きているのが印象的です。

齋藤やはりルピシアさんとのコラボなので、主役はお茶。お茶を使う必然性のあるレシピを心掛けました。小澤さんとの打ち合わせでも、お茶の個性を引き立てつつ、全体をどうまとめるかを話し合いましたよね。

小澤例えば、グロッグ以外は水出しアイスティーを使ったレシピですが、ジュースで割った時にもお茶の風味がしっかり生きるよう、あえて2倍の濃さでアイスティーを作るなどの工夫をしています。アレキサンダーのティーモクテルも、ピーチネクターとお茶をどの比率で配合するかがポイントでしたね。

齋藤今回は、ルピシアさんとのチームでの開発だったので、僕にとっても色々と新鮮でした。自分の引き出しにはなかった女性ならではの発想でヒントをいただけたのも面白かった。

――例えばどんなアイデアが?

齋藤プンシュなんかは、最初はローズヒップティーのティーハニーと津軽りんごのアイスティーを混ぜて作るレシピを考えていたんです。でも、ティーハニーの赤色と、アイスティーの黄色がきれいな二層に分かれるので、それをそのまま生かした方がいいんじゃないかとご意見をいただいて。

小澤赤と黄色の二層が、ちょうどりんごのような色合いだったので、プンシュのストーリーにマッチするなと思ったんです。見た目もかわいくて、写真に撮りたくなりますしね。

――まさにチームプレーですね。

齋藤はい。お茶専門店のルピシアさんとご一緒できたからこそご提案できたティーモクテルだと思います。どのレシピも身近に手に入る食材で簡単に作れますので、クリスマスのおもてなしに、ぜひお試しいただきたいですね。

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