『コスモスファーム』は1982年、現在の代表である安藤智孝(あんどうともたか)さんのお父様が創業した食肉牛を生産する牧場。「牛にも、人にも、あったかく」をモットーに安心・安全で良質な牛肉を提供し続けています。
創業以来、『コスモスファーム』ではホルスタインのオスの子牛を買い付け、肥育し、食肉牛として出荷するという事業を中心に行なってきました。10年ほど前のこと、買い付けた牛の中に1頭の見慣れない牛が混じっているという“事件”が起こりました。「そもそも、それは手違いでした」と安藤さんが語ってくれたのはユニークな偶然でした。
「ホルスタイン以外の牛を育てても買い手が付かないのですが、買い付けをお願いした方が誤って1頭のブラウンスイスを落札してしまいました。届いてしまったものを追い返すわけにもいきません。とりあえずトレーラーから降ろし、牛舎へ入れましたが、これがなかなか愛嬌のある子でした(笑)」
この“素敵な手違い”をきっかけに『コスモスファーム』では近所の牧場からブラウンスイスのオスを買い付け、肥育するようになります。当時、ブラウンスイスはミルクを搾るメス以外、まったく価値がありませんでした。しかし、十勝の酪農家の間に「『コスモスファーム』がオスを引き取ってくれる」という話が広まります。
「価値がないとはいえ、同じ生きものですから、本当は酪農家さんたちも困っていたのだと思います。ウチに預けたら大切にブランド牛にしてくれると、徐々に連絡をくれるようになりました」
ところで、ブラウンスイスのオスに価値がなかったのは、本当においしくなかったからなのでしょうか?
「それは単純に固定観念だったと思います。ホルスタインとブラウンスイスを比較すると、ブラウンスイスは旨みが深く、コクがあると感じました。歴史的にも和牛の品種改良にも使われた品種ですから、おいしくないはずがない。現在は『ノースコンチネント』のご尽力もあり、ブラウンスイスは市民権を得つつあります。私たちが出向く札幌の百貨店の即売会などでも、『ノースコンチネント』で使っているお肉ですよとご説明すると、皆さん大変興味を示されます」と語る安藤さんです。