放牧豚の始まり
「ウチは小規模だし、豚肉なんてどこも同じでしょう」と豪快に笑う平林さんに対し、「生産者までが明確な豚肉ってあまりないんです。しかも放牧されたものと聞けば、使ってみたくなるのが料理人の性(さが)ですよ」と返す植松シェフ。こんな楽しいやり取りで取材が始まりました。
平林さんが養豚を手掛けるようになったきっかけ、それは1973年に帯広で始めた喫茶店で、ソーセージや生ハム作りなど事業を拡大していく中で湧いた、素朴な疑問でした。
「この豚はどこで、どのように育ったのだろうと思って調べたところ、生産効率優先の日本の養豚の実情を知り、違和感を覚えたんです」。そして2000年、平林さんは放牧による養豚業をスタートさせました。
「エルパソ豚牧場」の広さは約30ヘクタール、常時1000〜1500頭ほどの豚が飼育されています。平林さんはこの牧場で繁殖から肥育、さらに牧場に併設された工場で肉の整形、加工、出荷までを一貫して行っています。