ルピシア グルマン通信11月 Vol.115 ルピシア グルマン通信11月 Vol.115
お世界を旅する気分 お弁当 お世界を旅する気分 お弁当

「おいしい料理」ができるには、さまざまな要素があります。ニセコにあるグルマンの工場にも、ここにしかない要素、いわば“おいしさのヒミツ”があります。今回はそのヒミツのご紹介です。

お弁当の歩み

一般的に弁当とは、携帯できるようにした食料のこと。外出先や旅先で、食事の調達が難しい場合、食料を持参する習慣は万国共通ですが、日本では特に独自の発展を遂げました。これは日本のお米が、炊いた後、冷めても比較的味が落ちにくいことに由来しているともいわれています。

日本の弁当のおおよその起源は平安時代。当時は「頓食(とんじき)」と呼ばれたおにぎりや「乾飯(ほしいい)」と呼ばれる調理した乾燥米を携帯食としていました。

安土桃山時代になると、漆器の弁当箱が作られ、弁当は花見や茶会といった席でも食べられるようになります。この時代を代表する超豪華宴席、豊臣秀吉が催した「醍醐(だいご)の花見」をきっかけに広まったともいわれるのが「花見弁当」です。お弁当の器のふたを開けるときのワクワク感は格別です。日本人は弁当をエンターテインメントのひとつとして捉えるようになったといえるのではないでしょうか。

江戸時代になると弁当はさらに多様化し、庶民がおにぎりを竹の皮や竹籠に入れて持ち歩く「腰弁(こしべん)」、能や歌舞伎の幕間に観客が食べる「幕の内弁当」なども登場します。江戸の町には折詰弁当専門店まであったというから驚きです。

鉄道の駅で弁当が販売されるようになったのは明治時代。最初はおにぎりと漬物を竹の皮に包んだものでしたが、やがて折詰弁当へと発展していきます。

高度成長時代の1970年代に入ると持ち帰り弁当専門店、いわゆる「ほか弁」が登場します。同時に、当時急成長を遂げたコンビニエンスストアでも「コンビニ弁当」が人気となり、スーパーマーケットに総菜コーナーが登場するのもこの時期です。

もちろん、家庭で作る弁当の文化も根強く、弁当箱の中に食材で人気キャラクターなどを表現する「キャラ弁」の流行も記憶に新しいところ。これは、海外でも「 k y a r a b e n」として知られています。

このように日本人と弁当は常に時代とともに寄り添い、歩んできたといえるでしょう。

箸(はし)の文化

日本の食と切っても切れない関係にあるのが「箸」の文化です。諸説ありますが、日本に箸の文化が普及したのは7世紀初頭、遣隋使(けんずいし)などによるといわれています。現在、世界の箸の文化圏は約3割だそうです。

日本の箸は単に「食べる道具」としてではなく、神事に用いられるほか、独特の作法や諺(ことわざ)など、とても幅広く日本人の生活に根差しています。

2013年、日本料理・和食がユネスコの無形文化遺産に登録された際にも、料理や調理法だけでなく、日本人の自然との関わりや精神的な習慣もプレゼンテーションの大きな要素となりました。きっと日本の箸の文化も一役買ったのではないでしょうか。

今日、世界各国の要人を招いた会食の席でも、当たり前のように箸が用意され、世界の一流レストランのカトラリーの中にも箸が見られるようになりました。こうした箸文化の世界的な浸透は、日本の弁当文化の広がりと無関係ではないと思われます。

弁当ゆえのハードル

さて、弁当が弁当たる重要な要素に「ひとつの器にさまざまな味わいが詰め込まれている」ということがあります。日本を代表する文化のひとつに「造園」がありますが、弁当を「食による箱庭づくり」と言い換えるのは大袈裟でしょうか? 

料理人は季節や土地の食材を組み合わせて、弁当という空間を構成します。「味良し」の他に「愛でて良し」も、造園同様、弁当の楽しみのひとつでしょう。

一方、お取り寄せメニューとしての弁当には、これまで高いハードルがありました。それはバラエティー豊かな総菜が詰め込まれた弁当ゆえの悩み。異なる状態の総菜を一度に冷凍し、ご家庭でおいしく解凍、加熱することの難しさでした。

総菜ごと、それぞれ別に加熱するのではなく、弁当として、一度に加熱調理ができて、もちろんおいしく食べられる。これは容易なことではありません。

この問題の解決に大きく貢献してくれたのが、先月号でもご紹介した液体急速凍結機です。

これは、一般的な空気で凍らせる冷凍機の20倍の熱交換率があるという技術で、これにより従来の冷凍技術と比較して、素材の持ち味をより保つことができるようになりました。この技術を用いることで、さまざまな素材を詰め込んだ弁当を一度に冷凍し、解凍・加熱後もおいしく食べられるようになりました。技術の進化はすごいですね。

今回、植松シェフは「お弁当で世界を旅する」というコンセプトのもと、世界各地の料理のテイストを取り入れたバラエティー豊かなお弁当を創作しました。一品一品、丁寧な手作りの味が際立つ総菜。ご家庭で手軽に、おいしいプロのお弁当を味わっていただけます。主菜としてはもちろんのこと、お酒の肴としても贅沢な味わいのグルマンのお弁当。皆さんのアイデアで、さらにおいしく、もっと楽しく味わってください。