“幻”の牛肉を求めて
「今回は、一年を締めくくるのにふさわしいごちそう素材の生産者を訪ねます。しかし、想像以上に山深いところですねぇ」と、ハンドルを握る植松シェフが向かう先はニセコから車で約4時間半、北海道のど真ん中・上川郡新得(しんとく)町。帯広平野の北、十勝川の上流にある十勝ダムのさらに上流、屈足(くったり)トムラウシに目指す「関谷(せきたに)牧場」はあります。植松シェフのお目当ては「関谷牧場」で肥育されているジャージー牛。同牛は、日本でもホルスタインに次いで飼われている乳牛種ですが、その肉はほとんど流通していません。関谷牧場は数少ない、そのジャージー牛肉の生産者です。
「やあ、遠くから、ようこそいらっしゃいました」と植松シェフを笑顔で迎えてくれたのは、牧場主の関谷達司(せきたにたつじ)さん。関谷さんがこの場所に牧場を開いたのは1989年のこと。関谷牧場の主な仕事は、生まれて間もない子牛を購入し、7〜8ヶ月かけて肉牛用の素牛(もとうし)として哺育・育成することです。関谷牧場で育った素牛は、別の肥育牧場でさらに肥育され、立派なブランド牛となります。