ルピシアだより 2019年8月号
チェック
目に耳に 心地よい夏 目に耳に 心地よい夏

暑さも次第に増し、本格的な夏がやってきました。移りゆく季節に寄り添い心地よい夏を過ごしませんか。

心惹く日本の夏

蝉の声が聞こえてきたら、本格的な夏の始まりの合図。ジリジリと照りつける陽差しが眩しく、まとわりつくような熱気は日に日に勢いを増すばかり。決して過ごしやすいとは言えない日本の夏ですが、花火や風鈴、ひまわり畑など、この季節ならではの情景には言い知れぬ風情や、心懐かしく郷愁を感じさせられます。

四季が巡る日本だからこそ味わえる、特有の美しさ。今年はどんな夏になり、どんな景色が見られるでしょう。目で見て、耳で聴く、心地よい夏の過ごし方をご紹介します。

音に聴く 季節の便り

日本の夏を象徴する風物詩の一つ、風鈴。すうっと吹き抜ける風に揺られ、チリンと響く澄んだ音色は、思い浮かべただけでも涼しさを覚えます。

代々続く風鈴工房「篠原風鈴本舗」の職人・篠原恵美さんによると、「風鈴の音色は、均一に響かないからこそ人々を魅了する力がある」のだそう。風に揺られる風鈴の音には不規則なゆらぎがあり、それがストレスを和らげる癒やしの効果を持っているといわれています。

こうした身の回りの何気ない自然音に季節感や風情を感じるのは、日本人ならではの感覚。例えば、グラスに注いだアイスティーと氷がぶつかり、カランコロンと跳ねる音も、さながら風鈴のように耳に心地よく、暑さを和らげてくれますよね。

心地よさという点に着目すると、アイスティーを味わいや香りだけでなく、茶器や氷の「音」にこだわって楽しんでみるのも面白いかもしれません。

茶器の素材や厚み、氷の大小でも音の鳴り方はずいぶん変わってきます。奏でられる音の心地よさという新しい視点で、お気に入りの茶器を見つけてみてください。

夏の音涼み 〜江戸風鈴の工房を訪ねて〜

お茶に見る夏の色

夏は見た目の涼やかさから、ガラスの茶器を使う機会が多くなる季節。移ろう四季折々の色を楽しむように、夏こそお茶の「水色(すいしょく)」を楽しんでみませんか。

水色というのは、お茶を浸出させたときに出る液色のこと。味わいや香りと同じように、お茶の個性を特徴づける要素の一つです。紅茶、緑茶、烏龍茶は色の見た目こそ様々ですが、元は同じ「カメリア・シネンシス」と呼ばれる茶の木を、発酵具合によって作り分けたもの。大きくは紅や緑、茶褐色と分類でき、さらに産地や製法、いれ方によって水色の仕上がりも微妙に違います。

そのわずかな色の違いを楽しむことに長(た)けているのが、日本人の持つ繊細な色彩感覚。昔から日本では植物や自然など身の回りのものから色を見つけ、若竹色や露草色といった伝統色を生み出してきました。微妙な色の違いに着目できるのも、その独自の感性があるからこそ。

「涼」に一工夫

お茶を作ったらなぜか濁ってしまい、透明感のない色みになってしまった経験、ありませんか? 「クリームダウン」と呼ばれる現象で、お湯出しにしたお茶がゆっくりと冷めていく際に、カフェインとタンニンが結合することで起こります。風味に影響はありませんが、せっかく水色を楽しむなら、透明感のある方がいいですよね。

そんな時は、簡単にできる水出しアイスティーがおすすめ。紅茶なら一晩(8〜10時間)、緑茶なら3〜5時間、茶葉と水を容器に入れておくだけで完成。水出しにするとカフェインや渋みが抑えられ、リラックス成分のテアニンによる甘みや旨みが引き出されます。

水出しアイスティーはそのまま召し上がるのもよいですが、ひと手間加えるだけで、特別な日にもぴったりなアレンジティーとしても楽しめます。夏らしい華やかさを演出するなら、グラデーションアイスティーがおすすめ。作り方はジュースと氷を入れたグラスに、お茶をゆっくり注ぐだけ。使用するお茶とジュースの組み合わせを変えると、また違った印象になります。個性豊かな水色で夏色のアイスティーを試してみてください。四季が巡る日本の夏。この季節ならではの心惹く色や音に触れ、その魅力を改めて感じてみるのはいかがでしょうか。

夕焼けアイスティー